【5分で学ぶ】明日から臨床で使える東洋医学入門編【その③】

東洋医学(鍼灸の技術)の特徴は『不定愁訴』や『痛み』へアプローチできることです。

しかし「アプローチできる」といわれても

「実際にどのツボを使ったらいいの?」

といった悩みがありますよね。

とくに学生の方や臨床に出たばかりの先生であれば、学んだ知識をうまく活用できずに落ち込むことも。

そこで今回の記事(その③)では、痛みを訴えるすべての患者さんにつかえる万能なツボ『四関穴(しかんけつ)』を紹介いたします。

すでに臨床で活躍されている先生はもちろん、学生の方にとっても復習にもなる内容です。

まずは基本をかためて、目の前の患者さんや日頃の勉強に役立ててください!

✔その①の内容

西洋医学で対応できない不定愁訴の改善が見込める=東洋医学の特徴

✔その②の内容

東洋医学にもとづいた臨床事例(尿路結石、足関節捻挫)

記事を書いた人

東 洋史(あずま ひろふみ)

『国際中医師』の資格を持つ数少ない鍼灸師。
電子書籍『東洋のチカラ』はAmazonランキング1位を獲得。医学レベルの知識を持つ鍼灸師育成に力を注いでいる。

もくじ

復習:痛みに対する東洋医学的な考え

東洋医学的な痛みの原因=不通則痛

『気の滞り(気滞)』や『血流の悪化(瘀血)』が痛みの原因

不通則痛をとりのぞくには

通経活絡=経絡を流れる気を通して(流れを促進して)活性化することで『痛み』がとれると考えます。

痛みを訴える人につかえる万能ツボ『四関穴』

合谷太衝
所属経絡手の陽明大腸経足の厥陰肝経
四関穴における
穴性
気関(※)血関(※)
穴性原穴原穴、兪土穴

東洋医学における臨床では、痛みを抑えたい場合『四関穴』を使用します。

四関穴=合谷と太衝の組み合わせ

『四関穴』とは、合谷と太衝の組み合わせを指します。

『関』とは?

東洋医学における『関』は、銃の引き金(トリガー)のようなイメージです。『小さな力で大きな動き』を生み出す作用があります。

合谷と太衝の組み合わせにより気血の流れが改善=不通則痛の改善

『気関=合谷』『血関=太衝』の組み合わせにより気血を流す効果が倍増

不通則痛の改善には、最適の配穴といえます。

【重要】四関穴3つの役割

四関穴:3つの役割

  1. ちいさな刺激で気や血に大きな『動き』をあたえられる
  2. 気血の流れを改善する
  3. 不通則痛を改善できる

上記のような理由から、痛みに対しては四関穴でもある合谷と太衝がよく使われます。

合谷=気関:気の流れを促進

合谷へのちいさな刺激で……

滞っている気に強く働きかける→気の流れを改善

手太陰肺経の裏経の原穴でもある合谷=気に作用する力が強い

手太陰肺経

肺は『全身の気』を管理する臓器=気に対する作用が強い

手陽明大腸経

  • 手太陰肺経の裏経のため気に作用する経穴が多い
  • 原穴にあたる『合谷』は全身を流れる原気に作用=気の流れを促す力が強い

合谷に刺鍼した時に起きた体の反応(東先生のコメント)

ストレスで気滞が生じている患者様の合谷に刺鍼すると、すぐにお腹が「ゴニョゴニョ」と鳴ります。

滞っていた気が動き出した音です。

鍼1本で『気滞に即効性がある=気の動きの変化』を実感しやすい合谷は、まさに『気関』と呼ぶにふさわしい経穴です。合谷をうまく活用して、無形の気に『動き』をあたえましょう。

太衝=血関:血の流れを促進

太衝へのちいさな刺激で……

滞っている血に強く働きかける→血の流れを改善

原穴としての役割

三焦の元気に通じる=流れを改善

兪土穴としての役割

流れを促進して体重節痛を改善

※体重節痛=体が重くて節々が痛む様子

足厥陰肝経に刺激→手厥陰心包経に作用する

厥陰心包経の流柱

足厥陰肝経の太衝への刺激により、同名経の『手厥陰心包経=循環器系』に動きを与えます。

直接、手厥陰心包経に刺激をくわえない理由は?

手の厥陰心包経には『血関』と呼ばれるような、血流を促進する経穴が存在しない

⇓⇓

血(血液)を身体の隅々まで
行きわたらせるのは『肝』の役割

血流悪化による不通則痛を改善したい→疏泄機能を高める

血流悪化による不通則痛を改善するためには、肝の疏泄機能を高めるのが近道です。

学校の授業でも、血は『全身の筋肉及び器官を滋養する』と習ったと思います。

ただし、通常の血行不良が原因の症状の他に『心神不安』など『神』に関する症状が診られれば、太衝に内関を加えると良いでしょう。

疑問:手厥陰心包経の役割とは?

手厥陰心包経の経穴は、血を流すよりも動悸などの『循環器系の疾患』によく使います。

実際の症例:耳鳴りのケース

東洋医学的な診断と配穴により、筋肉疾患以外の疾患に対応できた事例を紹介させていただきます。

  • 主訴:耳鳴り
  • 原因:気滞
  • 治療内容:四関穴(合谷・太衝)を中心に配穴
  • 目的:気血の流れをよくする
  • 性別:女性

2回目の治療のときには「前回の治療で耳鳴りが消えた」とお喜びの声をいただきました。

その後も、仕事が多忙の際は耳鳴りが時々出ていましたが、いまでは完治したと確認しております。

耳の疾患に使う経穴でもある『翳風』や、腎経の経穴(腎は耳に開竅する)を使うことなく改善したケースでした。

他の症状にも四関穴は使えるの?

今回ご紹介した四関穴は『気滞』が原因となる痛みに対して有効です。

気滞による痛み

  • 遊走痛(痛む部位が固定しない)
  • 脹痛(痛みより脹りの方が強い)

気滞により血流悪化=血瘀による痛み

  • 刺痛
  • 固定痛
  • 夜間痛

気滞により津液の流れが低下=痰湿による痛み

  • 酸痛
  • 重痛

まとめ:痛みを訴える人につかえる万能ツボ『四関穴』

四関穴とは?

『四関穴』とは、合谷と太衝の組み合わせを指します。

四関穴:3つの役割

  1. ちいさな刺激で気や血に大きな『動き』をあたえられる
  2. 気血の流れを改善する
  3. 不通則痛を改善できる

合谷へのちいさな刺激で……

滞っている気に強く働きかける→気の流れを改善

太衝へのちいさな刺激で……

滞っている血に強く働きかける→血の流れを改善

鍼灸院に来院される患者様は、ほぼ全員『痛み』に悩んでおり、原因のおおくはストレスによる『肝鬱気滞』です。

もちろん、四関穴だけで全ての痛みが完治するわけではありませんが、合谷・太衝に置鍼しながら患部の治療を行えば効果が高いだけではなく、その他の「肝鬱気滞」が原因の症状も同時に改善できるのです。

臨床で活用していただき、ひとりでも多くの患者様の苦しみを和らげてあげてください!

✔その①の内容

西洋医学で対応できない不定愁訴の改善が見込める=東洋医学の特徴

✔その②の内容

東洋医学にもとづいた臨床事例(尿路結石、足関節捻挫)

✔最新の情報を手に入れたい方は有料プランをご検討ください

無料会員プラン
  • 無料会員コンテンツの閲覧
  • 有料コンテンツの概要をチェック可能
  • オンラインセミナーのチケット購入
有料プラン(※)
  • オープンチャットへの招待
  • オンラインセミナーへの招待
  • すべてのコンテンツをいつでもチェック可能

※トライアルプランはオープンチャットの招待のみ

トライアルプラン
月額:980円】

WAICHI PROJECTの目的

  • 鍼灸師の基礎スキルを底上げ
  • 安心・安全な技術を患者さんに届ける
  • 現場に立つ鍼灸師の知識&技術を共有する
種市

運営側としては、完全に赤字レベルの内容となりますが、すべては鍼灸業界の未来のためです。WAICHI PROJECTをうまくご活用いただき、一緒によりよい未来をつくり出しましょう!

もくじ