鍼灸師がエコーを使うメリット5つ【注意点もあわせて解説】

クライアントの体に鍼を刺した時に、鍼の角度や深度に不安を覚えたことはありませんか?

鍼灸師は人の身体に『鍼を刺す』という侵襲性の高い治療行為ができる特別な資格です。そのため、体表から見たときに「どのような解剖学的な構造が広がっているのか?」をイメージできなくては、思わぬ事故につながりかねません。

樋口

鍼灸師にとって鍼を刺す行為を「なんとなく、妄想的に」というのはNGです。

そんな不安を打ち消すために、筆者(樋口)はエコーの導入を決めました。

エコーを使用するメリット5つ
  1. リスク管理が出来る
  2. リアルタイムの観察が可能
  3. 再現性が高い
  4. 触診の技術が飛躍的に向上する
  5. 鍼灸師として自信が持てる

高価な機械だけに、簡単に導入できるものではありません。しかし、エコーの利用により、自分の技術に対する自信をもてるうえクライアントへ与える安心感も大きく変わります。

今回の記事ではエコーの導入を迷っている先生方にむけて、筆者の経験をもとにメリットとあわせて注意点もお伝えさせていただきます。

記事を書いた人

樋口 尚生(ひぐち たかお)

超音波(エコー)でツボ探訪しつつ、スポーツ疾患や脱毛症の鍼施術をメインに活動中。電子書籍『超音波で見る鍼とツボ〜下腿編〜』の著者。

もくじ

エコーを使用するメリット5つ

  1. リスク管理が出来る
  2. リアルタイムの観察が可能
  3. 再現性が高い
  4. 触診の技術が飛躍的に向上する
  5. 鍼灸師として自信が持てる

1.リスク管理が出来る

いちばん大きなメリットは、より明確なリスク管理ができることです。

【例】志室(第2・第3腰椎棘突起間の外3寸に取る)に刺鍼

主訴が腰痛のケースで使用される経穴の1つと思われます。

刺鍼時には、どのようなリスクが考えられるでしょうか?

以下のスライドで確認してみましょう。

【ツボ探訪 L2/3高位】

拡大すると以下のようになります。

後正中線より外方に3寸(1寸=3.03㎝)の志室の深層(約2㎝)には「腎臓」があります。とくにやせ型の方であれば注意が必要で、鍼を深く刺してしてしまうと腎臓を損傷する恐れがあります。

樋口

志室付近に鍼を刺すときは、リスクをつねに頭に入れておきましょう。

2.リアルタイムの観察が可能

2つ目のメリットは、筋肉や腱の動きがリアルタイムで観察できる点です。

エコーの使用により、今まで『感覚的』に各組織をイメージしていた触診が詳細かつ正確に可視化できるようになります。

3.再現性が高い

エコーを使えば、体表面からは確認できない鍼の深度や角度が視覚的に確認できるため、再現性の高い施術が行えます。

どのくらいの深度、角度でどのような反応がでるのか?まで把握しやすくなるため、より的確な施術をクライアントに提案できるでしょう。

【例】直刺1㎝の深度にある組織を斜刺で狙いたい

このようなケースでもエコーであれば、感覚に頼らず画面越しに把握できるため、術者はもちろんクライアントにも安心感を与えることができます。

樋口

鍼が得意な鍼灸師と苦手な鍼灸師のちがいは、この『再現性』にあると考えております。

ゴルフを例にあげると、おなじクラブでおなじスイングでおなじ距離飛ばせるということになります。

鍼灸師であれば、どのように触診し、どの方向にどのくらいの深さで刺鍼するとどのような反応が出るのか?となります。

4.触診の技術が飛躍的に向上する

エコーを使うと、触診の技術が飛躍的に向上します。画像で組織を確認しつつ触診できるため、感覚に頼る学習とはあきらかに効果がちがいます。

樋口

体感的な部分もありますが、学習効果は2倍にも3倍にもなります。

ただし、はじめはエコーの画像を見てもいまいちピンとこないケースもあるでしょう。理由として考えられるのは、基本的な解剖学的イメージや触診ができていないことが考えられます。

まずはエコーがない環境でも、目的をもって触診すること。そのうえで、エコーで確認できれば触診技術は大きく上がります。

5.鍼灸師として自信を持てる

5つ目はメンタル的な部分ですが、エコーの使用により鍼灸師として自信が持てるようになります。

冒頭でもお伝えしましたが、鍼灸師は人の身体に「鍼」という侵襲性の高い治療行為が可能です。

樋口

見方を変えると、つねにリスクと隣り合わせともいえます。

臨床の現場で、つねにリスク(不安)を持ったまま現場にいても信用は得られません。鍼を刺す行為に対して自信を持てる鍼灸師になるためにも、エコーは大きな役割をはたしてくれるでしょう。

エコー利用時の注意点3つ

  1. 使いこなすまでに時間がかかる
  2. 鍼灸業界でエコーを利用している人が少ない
  3. 診断行為をしてはいけない

使いこなすまでに時間がかかる

見たい画像を得るためには、適切な操作をしなければならず、検査にスキルが必要であるということがあげられます。また、得られた画像の解釈がむずかしく、すぐに理解するには知識や経験が必要です。

樋口

エコーを使用しても、慣れていないころはいかに自分の理解していると思っていた解剖学が「あいまい」であったかを目の当たりにしました。

鍼灸業界でエコーを利用している人が少ない=相談相手がいない

現在の鍼灸業界においては、エコーが普及しているとはいえません。そのため、気軽に相談できる相手がいないといったデメリットがあります。

しかし、見方を変えれば他の鍼灸院はもちろん、整骨院やリラクゼーションサロンとの大きな差別化ができるということ。

デメリットを上回るメリットは充分に得られるでしょう。

樋口

WAICHI PROJECTにて樋口がフォローいたします。

診断行為をしてはいけない

鍼灸師にとってエコーの意義は、鍼という侵襲性のある治療をいかに安全かつ効果的に行うためのものであり、診断をするための機械ではありません。

もし画像上で異常に感じた際には早期に医療機関への受診を勧め、医師の判断を仰ぐべきす。

樋口

当院でもエコーで撮像して、近隣の医療機関にご紹介した事例もあります。

ルールを守り適切に使用すれば、医療連携の大きな武器になり、医師からも信頼の得られる鍼灸師になれると考えております。

余談:近年のエコー事情

最近では、リハビリテーションにおける理学療法士も、治療を行う前に患部をエコーで確認しているケースがあります。

「どのような解剖学的な構造があり、どのような動きをしているのか?」をリアルタイム観察する作業を当たり前のように行っています。

鍼灸師こそエコーの知識を

くり返しになりますが「鍼」という道具を使い人体内にアプローチしていく鍼灸師こそ、リアルタイムで観察できるエコーの断層解剖を知るべきだと思います。

樋口

体表面からの押圧や、関節運動によって行う治療だけでは身につかない感覚を身につけましょう!

まとめ

エコー利用時のメリット5つ

  1. リスク管理が出来る
  2. リアルタイムの観察が可能
  3. 再現性が高い
  4. 触診の技術が飛躍的に向上する
  5. 刺鍼スキルに自信を持てる

注意点(デメリット)3つ

  1. 使いこなすまでに時間がかかる
  2. 鍼灸業界でエコーを利用している人が少ない
  3. 診断行為をしてはいけない

鍼灸師にとって鍼を刺す行為を「なんとなく、妄想的に」するものではありません。

かくいう私も、専門学校の実習中はもちろん、免許を取って患者さんに鍼をしている時「自分の触っている場所」「刺した鍼の向かう先」をイメージしきれていませんでした。

しかし、解剖学の勉強が思う存分できる整形外科クリニックで勤務できたことで、理学療法士の先生方とともにエコーに触れる機会を多く持てたのは大きな財産となっています。

樋口

いままでの経験をもとに、今後もエコーについての知見をWAICHI PROJECTに参加されたみなさまと共有させていただきます。

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種市

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